楽しい思い出ほどおぼろげだから。言葉で残す、母と夫と巡る松島旅。
- キオラ!ロトルア
- 6月16日
- 読了時間: 6分
TAOYA秋保で心も体もリフレッシュした後は、いよいよ日本三景の地、松島へと向かいます。
あいにくの雨模様となってしまいましたが、雪でなければノープロブレム。
実は、松島には以前も訪れたことがあるはずなのですが、不思議なことに記憶がすっぽりと抜け落ちています。
辛い経験は絶対に忘れないのに、なぜ楽しい思い出ほどおぼろげになってしまうのでしょう。
だからこそ、こうして言葉にして記録に残しておくことは、未来の自分への贈り物なのかもしれません。
松島さかな市場で、あえて「ラーメン」を選んだ訳
松島に到着して最初に訪れたのは、「松島さかな市場」です。

1階の物産スペースには、新鮮な魚介類や珍味、缶詰、海苔、笹かまなどのお土産が約1,500種類もずらりと並び、海鮮好きなら誰もが心を躍らせる空間。

できることならNZへ丸ごと抱えて帰りたいーー。
そんな叶わぬ願いを抑えながら、義父の好物である牡蠣めしなど、お土産をいくつか選び、夫の実家へクール宅急便で手配しました。
そうこうしているうちにお昼時を迎え、120席以上のスペースがある2階の食事処へ。
ここは大型マグロ漁船を持つ船元が運営しているため、鮮度抜群の天然マグロにこだわりを持っています。
旅行前は「絶対に名物の海鮮丼を食べよう」と意気込んでいたのですが、私たちは数時間前の朝食で美味しい海鮮丼をいただいたばかり。
さらに、有名なカキフライも、昨晩の夕食で揚げたてを心ゆくまで堪能しています。
悩んだ末、三人揃って選んだのは……「ラーメン」。


この日は店内でもジャケットを脱げないほど肌寒い日だったため、熱いスープが冷えた身体と胃袋に染み渡りました。
これはこれで、最高の選択です。
静かなる海と、AIが選んだ「NZ三景」
松島といえば、京都の天橋立、広島の宮島と並ぶ日本三景の一つ。

ふと、「もしニュージーランド三景を選ぶとしたら、どこになるだろう?」と頭をよぎりました。
AIに尋ねてみたところ、返ってきたのはこんなラインナップ。
① 氷河が削り出した神秘の長大フィヨルド:ミルフォード・サウンド(南島)
② ミルキーブルーと世界一の星空:テカポ湖(南島)
③ 先住民の聖地とダイナミックな活火山:トンガリロ国立公園(北島)
なるほど、これには私も大いに納得です。

話を松島に戻しましょう。
松島観光の定番といえば、多島海の絶景を特等席から間近に体感できる遊覧船です。
船内アナウンスからは、点在する島々のユニークな特徴や、伊達政宗が「あの島を城まで運んだ者には千貫の銭を与える」と言い放ったという逸話が流れてきます。
湾内を一周するコースの乗船時間は50分。

乗り物酔いしやすい私にとって、決して短い時間ではありません。
しかし、そこは松島。
幾重にも連なる島々が天然の防波堤となり、ほとんど揺れがありませんでした。
ただ、お腹がいっぱいだったことも手伝ってか、脳がゆっくりとスリープ状態へ……。
後半の景色の記憶は波の音ととも消えていきます。
思い出はときに、美味しい食べ物によって上書きされてしまうようです。
ずんだカフェで起きた、穏やかな母の「事件」
遊覧船を降りた後は、海沿いに並ぶお土産屋さんをのんびり見てまわりました。
猫の形をした可愛らしいお香の雑貨を購入し、五大堂へ。

海岸から少し離れた小島に建てられており、そこへ渡るために赤い橋が架けられています。
この橋が「透かし橋(すかしばし)」として有名です。

ひと息つこうと「ずんだカフェ」へ。
ここで母は、ずんだ餅と抹茶のセットを注文したのですが、ひと口すするなり何やら険しい顔をしています。

「抹茶が濃すぎたのかな?」と思い声をかけてみると、
「これだば、お湯がぬる過ぎる!」
普段はとても穏やかで、感情を荒らげることなど滅多にない母。
しかし、お茶の作法を嗜んでいた母には、どうしても譲れない一線があったようです。
お会計の際、母は店員さんに向かって、
「抹茶のお湯は、もっと熱めにしたほうが良いですよ」
と、そこは冷静に、綺麗な標準語でアドバイスを残していました。
リベンジの抹茶と、小さくなった母の背中
少し冷えた体を温めるべく、今宵の宿へと向かいます。
お世話になったのは、「松島温泉 小松館 好風亭」。
前日の大型オールインクルーシブホテルとは異なり、プライベート感を大切にした落ち着いた佇まいの宿です。
チェックインを済ませると、海を一望する特等席のテーブルへ案内され、ウェルカムドリンクをいただきます。
母はここで、迷わず「リベンジ抹茶」をオーダー。
旅館の方がその場で丁寧に立ててくださった抹茶を口にした瞬間、母の顔がほころびました。
「この熱さよ。本当の抹茶は!」
どうやら母にとっては、香りや味以上に「お湯の温度」が抹茶の決め手だったようです。

3連休明けということもあり、館内は静かで落ち着いた時間が流れていました。
夕食前、大浴場へ向かうと嬉しいことに貸切り状態。
目の前には、静まり返った多島海の絶景が広がっています。

松島温泉の湯は、「アルカリ性単純温泉」。
とろとろ、さらさらとした優しい肌触りが特徴の、まさに美肌の湯です。
洗い場で、母の背中を流し、髪を洗ってあげました。
母の背中は、記憶にあるものよりも小さくなっていて、「自分もそれだけ歳を重ねたのだな」と感じます。
振り返ってみれば、こうして母と一緒に温泉に浸かり、何もしない贅沢な時間を過ごしたのは久しぶりかもしれません。
あぁ、この旅行を計画して、本当に良かった。
湯上がりにドライヤーで母の髪を乾かしてあげながら、温かな幸福感に包まれていました。
丁寧なおもてなしに心満たされる、懐石料理
部屋に戻ると、待ちに待った夕食の時間です。
昨晩の華やかなバイキングとは一変し、今宵は一皿ずつ職人の技が運ばれてくる懐石料理のフルコース。

食前酒としていただいた地元の日本酒は、さらりとした綺麗な飲み口でした。
実家のある秋田も日本酒の名所ですが、これまで私はもっぱらビールとワイン、ときどき芋焼酎。
しかし、美味しい日本酒をいただくとその味と深みをもっと知りたくなります。
日本へ旅する口実が、またひとつ増えてしまったようです。
三陸の豊かな海の幸や、東北の旬の味覚を散りばめたお料理は、どれも目を見張るほど手が込んでいます。


小松館は全41室と多すぎない客室数。
きめ細やかなおもてなしが本当に心地よい宿です。
こちらの食べるペースをさりげなく見計らい、絶妙なタイミングで次の器を運んでくれる。
そして、つかず離れずの温かい声をかけてくれる。
「心の通った日本のサービスは、やっぱり世界一」
海外暮らしが長くなり深く身に染みる夜でした。
お腹も心も、これ以上ないほど満たされて。
(つづく)







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