経済成長を犠牲にしても環境を守るNZの決意
先月(2019年5月)末、ニュージーランド政府は次年度の予算を発表しました。
その発表の際に予算の責任者であるロバートソン財務相は「これまでと異なる方法でニュージーランドの成功をはかる」と述べています。
『これまでと異なる方法』とはどういうことなのでしょうか?
国内総生産(GDP)のみに頼るのではなく、国民の生活水準の向上や環境保護、地域社会の連携強化などに力を入れるというのがその主旨だったようです。
とりわけ私が注目したのは「環境保護」でした。
やみくもに経済成長を目指せば、この国の美しい環境は破壊され、取り返しのつかない影響を後世に与えてしまいます。
経済優先の政策で突き進んできた中国は、日中マスクをしないと外出できないほど都市部の大気が汚染されてしまいました。
中国とは対極のクリーンなイメージがあるニュージーランドでも、移民や外国人観光客の急増などにより、環境破壊の問題が深刻になっています。
政府は、今回の予算で環境保護に力を入れていく姿勢を明確に示したわけです。
昨日(6月5日)は環境保全に対する関心を高めるために国連が定めた「環境の日」でした。
ニュージーランドの観光業界はこの国を訪れる旅行客に向けて環境への配慮を促す指針をまとめ「ティアキ・プロミス」として啓蒙活動を行なっています。
プロミスは英語で「約束」という意味ですが、ティアキとはどんな意味なのでしょうか。
これは先住民族マオリ族の言葉で「環境や人々を守る」という意味になります。
この国の環境と人たちに対する「ケア」を忘れずにニュージーランドを旅してもらいたい、という旅行者へのメッセージです。
ティアキ・プロミスの思いをよりわかりやすく伝えるために作られたのが以下のイメージです。

左から「自然を守る」「クリーンに保つ」「安全運転をする」「準備を怠らない」「敬意を払う」ということがイラストと文字で書かれてあります。
人口500万の国に年間350万人もの外国人が訪れるわけですから、NZ国民の自助努力だけでは限界があり、旅行者も同様に環境保護に取り組んでもらう必要があるのです。
旅行業界に属する企業も環境保護の取り組みを進めています。
例えば、キャンピングカーレンタルで知られるジューシー社は、今月から電気キャンピングカー(EV)のレンタルを開始します。
(ジューシー社のEVキャンピングカー動画)
自然豊かなニュージーランドは、キャンピングカーで旅をする人がとても多い国です。
そして、この電気キャンピングカーのベースとなっている車は「日産」の電気自動車。
日産は電気自動車の分野では先駆け的な企業で、日本の環境技術がニュージーランドでも活躍するのを見られるのは、日本人として嬉しいものです。
電気自動車が必ずしも環境に良いというわけではない、と思う方もおられるかもしれません。
たしかに、化石燃料を使用して発電するのであれば、「電気を使うほど環境に悪影響を及ぼす」なんてことになりかねませんものね。
しかし、そこは環境への意識が高いニュージーランド。
すでに電気の8割は再生可能エネルギー(水力・風力・地熱など)によって作り出されているのです。
クリーンな方法で作られた電気を使って走る自動車が増えれば、さらに環境に優しくなるわけです。
また、電気自動車の方がガソリン車よりも燃費が良いので、利用者にも節約メリットが生まれ、Win-Winの関係になります。
そのほか、北島南西部のワンガヌイにある宿泊施設「ナイトスカイコテージ」では、「ごみゼロ」を推進するため、プラスチックを使用しないことや宿泊客の食べ残しは肥料に使うなどの取り組みを行なっているそうです。
政府・企業・国民・旅行者が一体となって環境保護に取り組めば、「世界の箱庭」と呼ばれる美しい自然をずっと残していけることでしょう。
当社も観光業に携わっていますので環境保護意識をもっと高めて、微力ながら尽力していきたいと考えています。