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意外と知らなかったNZの酪農・パート1

執筆者の写真: キオラ!ロトルアキオラ!ロトルア



ニュージーランドは言わずと知れた酪農大国です。


車で郊外を走れば緑の牧草地が目の前に広がり、牛たちがそこかしこで草をはんでいます。


この国では見慣れた風景ですが、酪農はNZにとって外貨をもたらす非常に重要な産業です。


調べてみると意外と知らなかったNZならではの飼育法、酪農家の工夫や努力ががありました。


特徴的な事柄をいくつか見ていきたいと思います。


①酪農スタイルに合わせた品種改良


乳牛といえば白と黒のホルスタイン種が有名で、雌牛の体重は平均650kgと軽自動車並みの重さがあります。


一方、NZのホルスタインの体重は470kgほど。通常より3割弱も小さいサイズが特徴です。


これは独自に品種改良されたためで、コンパクトな分、飼育しやすくメンテナンス費用を抑えられるメリットがあります。


また、横長・短足、強靭な足をもつ体型は広い牧草地を歩き回れるようにするためです。


ホルスタイン以外では茶色で可愛らしいジャージー種(全体の約12%)が多く飼育されています。


ジャージーはホルスタインと比べるとさらに小型(メスの体重は350〜400kg)で、取れる乳量は1/3ほど少なくなります。


しかし、ジャージー種の牛乳には脂肪分が多く含まれるメリットがあり、「バター牛」なんて別名があるほどです。


ニュージーランドは世界最大のバター輸出国で、ジャージーはその重要な役割を担う乳牛なのです。


乳量が多いホルスタインと乳脂肪が多いジャージー。


NZではこの2種を掛け合わせたミックス牛が最も多い割合(約43%)を占めています。


②生産性が高く世代交代が進みやすい


日本の酪農家は高齢化が進んでおり平均年齢は50代半ば。


廃業してしまう酪農家は毎年1000戸にも及びます。


後継者不足に悩む酪農家が多いのには、単に仕事が重労働であるというだけではなく、ビジネスとしての魅力に乏しいことも理由の1つと考えられています。


日本の酪農では牛に配合飼料を与えますが、輸入に頼る飼料の価格が高騰したことで経営を圧迫しています。


また光熱費が上昇したことで夏は牛舎の暑熱対策費用が増加。


それにより赤字経営に陥る酪農家が少なくありません。


乳価は過去10年ほど1kgあたり100円前後と横ばい状態。


売り上げが伸びない一方でコストだけが増えていく、という厳しい収益構造になっています。


一方、NZの酪農収益はどうなのでしょうか。


収益性を考える上で、まず大きく違う点が飼育方法です。


NZの乳牛は広大な牧場に放牧され、自然に育った牧草を食べて育ちます。


放牧では糞尿処理の手間(人件費)や処理機の導入・維持コストを削減することができ、また大きな牛舎(設備投資)も必要ありません。


飼料は補助的に与えるのみのため、価格が上がってもコストの増加は限定的です。


日本では政府から農家への助成金がありますが、NZにはそうした経済支援はありません。


一見大変に思えますが、それが酪農家のコスト意識を高める結果につながっています。


NZの酪農は世界で最も低コスト(効率性が高い)と言われ、他国と比べて収益性は高いのが特徴です。


では、酪農従事者の収入はどうなのでしょうか。


給与は平均以上と言える水準で、NZで酪農といえば魅力のある職業になっています。


牧場の従業員として働くだけではなく牧場オーナーを目指したい。


そうした場合はシェアミルカーというNZならではのシステムもあります。


牧場主になるには広い牧場が必要で、多くの若者にとっては資金が足りません。


高齢のオーナー経営者から若い酪農家が土地を借り、牧場の作業を代行する報酬として、 経営者と合意した比率 (シェア) で農場収入を受取る仕組みです。


歩合制であることから、若い酪農家は技術を向上させることで生産性を上げ、コストを厳しく管理します。


また、高い報酬比率を得る場合は、運営費用の一部を負担したり、牛の群れや酪農機器を所有しなければならないなど、一定の責任を負う必要があります。


小資本でスタートし、技術や経験、資金などを蓄えながらステップアップし、やがて牧場オーナーとなり、そして高齢になったら新たな参入者に牧場を貸しだす。


NZの酪農はローコスト経営によって高い収益性を生み出すだけではなく、酪農家を目指す若者を支援する仕組みがあることで持続可能な後継者づくりに成功しています。


パート2に続く

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