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NZの歴史的な高金利がもたらすもの




ニュージーランドの銀行の金利はとても高いです。


お金を借りると返済が大変ですが、預けると利息が年5〜6%もつきます。


定期預金の金利(1年)

ANZ 5.70%

ASB 5.70%

BNZ 5.70%

Kiwi Bank 5.75%

Westpac 5.70%

Heartland 6.0%

Rabo Bank 6.0%

TSB 6.0%


2023年5月現在、日本の三菱UFJ銀行に100万円を定期預金(1年)すると、


100万円×0.002%=20円


一方、NZで1万ドルを定期預金(1年)にすると...


$10,000(85万円)×6%=$600(5.1万円)


預金元本が少なくても、もらえる利息は単純計算で数千倍も多い...


ノーリスクでこれだけ利子がつくのであれば、貯金のモチベーションも上がります。


銀行は民間企業ですから破綻リスクもあるので、完全なノーリスクとは言えないかもしれません。


ただ10万ドル(約850万円)までの預金は保護されますし、それ以上は銀行を分散すれば良いだけです。


しかし、なぜこんなに金利は高くなったのでしょうか。


銀行のローンや預金などの市中金利は、中央銀行が決定する政策金利を指標に決められます。


現在の利上げサイクルの起点は2021年の10月です。


当時0.25%だったNZの政策金利はその後ノンストップで引き上げられます。


(NZの政策金利の推移 / interest.co.nz)



それに伴い銀行の金利も上昇。



(定期預金の金利の推移 / interest.co.nz)



来週にはもう一段の利上げが行われると予想されています。


中央銀行が急激に金利を引き上げなければならなくなった最大の理由は歴史的な物価高です。


現在、NZのインフレ率は6.7%。


(インフレ率の推移 / Stats NZ)


これは30年ぶりの高水準で、中央銀行が目標としている2%台とかなり開きがあります。


インフレ率を下げるには世の中の経済活動を冷やさなくてはなりません。


金利を引き上げることで、企業や個人は借金の支払額が増え、また、新たな借金もしにくくなります。


収入を増やすのは簡単ではないので、通常は節約などして支出を減らそうと考えます。


結果的に需要が減退し、供給とのバランスがとれることで物価が落ち着く...


単純に言えばこんな流れになるのですが、今回の物価高は簡単には落ち着いてくれませんでした。


コロナ禍により消費が抑えられたことで家計に余裕が生まれ、また、反動としての消費も根強く、景気が維持されています。


失業率は3.4%と低く保たれ、特にNZ経済の65%を占めるサービス業を中心に人手不足となったことで人件費が上昇しました。


さらに、大雨や洪水で農作物に影響が出て食品価格が上がるなど、インフレ退治には"泣きっ面に蜂"状態です。


ただ、金利上昇が景気に影響しているのは確実で、インフレ率もピークアウトした兆候を見せています。


今月、世界保健機構は3年3ヶ月にわたる新型コロナの緊急事態宣言を終了すると発表しました。


コロナは終焉を迎えましたが、その後遺症として残った物価高が落ち着くにはもう少し時間がかかりそうです。


中央銀行としては高金利を維持せざるを得ず、結果的に銀行金利も高いままの状態が続きます。


冒頭にも書いた通り、ニュージーランドは預金するなら天国のような場所です。


一方で、借金をすると地獄の苦しみが待ち構えています。


何にでも一長一短があるものですが、そう考えると日本の超低金利も悪くないような気がしてしまいます。



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